【分割要件違反を解消するための訂正が訂正要件違反となった事案】

 

投稿日:2026年5月21日

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著者:弁理士 榊間 城作
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

分割要件/訂正要件

 

ポイント

特許権者(原告)は、分割要件違反を解消するため、明細書等を分割直前の範囲内に訂正する訂正審判を請求したが、特許庁は当該訂正が特許法126条1項所定の目的に該当しないとして請求を不成立とし、知財高裁もこれを支持して原告の請求を棄却した。

 

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第4部
判決言渡日 令和6年3月6日
事件番号 令和5年(行ケ)第10085号
事件名 審決取消請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
宮坂 昌利
本吉 弘行
頼 晋一
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)

事案の概要

 原告(特許権者)は、原出願の審査過程において、明細書・図面の一部を削除する補正をし、その後、特許査定を受けた。そして、特許査定の謄本送達から30日以内に本件特許に係る分割出願(特許法44条1項2号)をした。当該分割出願は、原出願の当初明細書等の範囲内であるものの、分割直前の明細書等の範囲内でないことが、関連特許の事件(侵害訴訟・無効審判)から明らかとなり、当該関連特許の無効が確定した。原告は、本件特許の分割要件違反を解消するために、本件特許の明細書等の記載を原出願の分割直前の明細書等の範囲内とすべく明細書等を訂正する訂正審判を請求したが、特許庁は、当該訂正が特許法126条1項各号を目的とするものでないとして「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。原告は、当該審決の取消しを求める本件訴訟を提起したが、知財高裁は当該審決を維持し、原告の請求を棄却した。

争点

 分割要件違反を解消するための明細書等の訂正が、特許法126条1項各号所定の訂正目的(誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明等)に該当するか。

判旨

 「…分割直前の出願明細書等と本件設定登録時明細書等の関係における分割手続の瑕疵は、同法44条の適用における問題であり、それ自体は訂正の対象である本件設定登録時明細書等自体に明瞭でない記載(同法126条1項3号)があることを意味するものではないし、同項2号にいう誤記又は誤訳に当たるものでもない。
 本件特許出願に係る分割手続の瑕疵が看過されたという事情が仮に認められるとしても、原告らの主張は、明細書等の訂正の名の下に分割出願のやり直しを求めるに等しいものといわざるを得ないところ、これを正当化する根拠を見いだすことはできない。」

解説/検討

 複数世代を経た分割出願の場合、すべての世代の出願がもとの出願との関係で分割要件を満たしていないと出願日の遡及効が得られない(知財高判平成29年9月26日・平成28年(行ケ)第10263号[配線ボックス事件])。分割要件違反を内包する出願が拒絶査定となっている場合には分割要件違反を解消する手立てはないが、特許権の設定登録がなされている場合には、訂正により分割要件違反を解消し得る場合もある。
 しかし、訂正により分割要件違反を解消することができるのは、飽くまでも、当該訂正が特許法126条1項各号を目的とする場合であり、明細書・図面については、訂正の目的要件を満たしつつ分割要件違反を解消する訂正を行うことが困難であることが本事案によって明らかとなったといえる。
 

 

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